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yahooのブログから来てくださった方はこんにちは。
このサイトしかしらないよ!の方はお久しぶりです。 気づけば年単位での放置をし、サーチやリングサイトさまはほぼ閉鎖されていました。 しかもPCを変えるときにデータを移動し忘れたので、千茅くんの設定が消えまし・・・た。 一気にアップして驚かそうとした(笑)中編も・・・泡に・・・。 異世界トリップもので(この設定好きなんです)、狼男と高校生のお話でした。 あー・・・桜井はこういう禁断?の関係が好きです。当初、ヴァンパイアと迷いました。 yahooブログでは別名で別活動しております。 が、ちょっとこちかJUGEMさんか他のブログ屋さんに乗り換えたいなと考えてみたり。 だって、文字が大きくできないんです。 あと、私の技術だとニコ同も貼れません;; 色も変えられなければ、タグも不可。あれ?・・・たぶん不可だと思う。 アバターの着せ替えとか楽しいんですけど、私はコメレスのときくらしか使用しないので魅力的とは言いがたい。 エキサイトさんは内容をたためれば完璧です。←とか思ったらmore機能が追加されてました! やはりJUGEM? このサイトの別館として併設も考えてみたりしているのですが、いかんせん材料が足りずに足踏み。 久しぶりに書き込みしたら、できる事が増えていますね。 百の月と千の星は、開設当初htmlタグを手動で(笑)打って作ったので楽しいです。 小説の改行とかも、brを無心で打ち込んでいました。 その後スタイルシートに変更。やはり見栄えで攻めなくてはと。(はったりです) しかしこれも手打ち。 しかも改行位置と文字の大きさと強制にしてしまったので、見る人が見るととても見苦しい結果に。 windousでしか動作確認してないです。macで崩れてたらショックだわ。 数年前の自分のブログを読み返してみたら、 相当良い子ぶってて 月日の流れを感じました。 私のpureはいずこ。 小説を書くことは無くなりましたが、まだ文章を書くことは好きです。 いつ復帰するか、閉鎖するか、はたまた別の道を開拓するかは分かりませんが、辺境で今日も生きています。 以下、コスプレ・腐女子の言葉に、嫌悪・不理解・文句がある方は見ないことをオススメします。 不愉快な気持ちにさせてしまうと思います。 More
本当に、長編(になる予定のもの)が年1更新になっている・・・!!
覚えていらっしゃる方はまずいないだろう、自己満足の塊です。 最近読んだ本 「彩雲国物語 隣の百合は白」 感想(ネタバレ含む!!) 紅家のおじさま方はあまり特別視していなかったので、紅家おじさまずくめなこの一冊、楽しめるかどうかとても不安でした、が!!! すごく面白かったです。 特に書き下ろしの「地獄の沙汰も君次第」は、 最高でした・・・!!!!! まさか黎深さまでラブコメが書けるとは!恐れ入ったぜ雪野先生!! 百合姫の性格が良いなぁ。 さばさば系というかズバズバ系というか。 口調は譲葉のときのが好きです。だって黎深を「君(きみ)」呼ばわり! 「何いってんのさ君はー!」「君の口から譲歩!!何語。」とか可愛くないですか。 これで男装してるってんだから素敵だなぁ。挿絵も一枚、譲葉で描いて欲しかった・・・。 「お伽噺のはじまりは」は、しょうかさんに惚れました。 「それでも君は私が好き?」で、ああ、この人ドSじゃん・・・と実感しました。 優しいんだけど、根がS。素敵ー! 先代黒狼にはびっくりしました。そう・・・だったんだーという感じ。でも落胆ではなく、そうきたか!みたいな。喜びプラスで。 「恋愛指南争奪戦!」は、争奪戦の模様ももちろん楽しかったのですが、最後の、それぞれの新年の迎え方が好きです。 龍蓮が分かってるっぽいところが、「龍蓮の真髄」を見た気がします。やっぱり天才。 劉輝バージョンはホントもう切ない。誰か一人くらい側にいてあげてよー・・・。 そんなこんなで、魅力満載の一冊でした! ごちそうさまです。 『soulcakes』 黄昏色のかぼちゃが笑っている。 半月のように弧を描いた口と三角形の目からは小さな灯りが漏れて、持つ人の体をぼんやりと照らしていた。 かぼちゃのランプを持っていたのは少年だった。 金色の髪は夜の闇の中でわずかな灯りを受けて、かぼちゃのように夕焼けの色をしている。 真っ黒なローブは少年のくるぶしまで隠し、わずかに覗く足元からは茶色い革靴が覗く。 「お菓子くれなきゃいたずらするぞ!」 様々な仮装をした子供たちが家々をめぐり、お決まりのセリフを言う中、少年だけはどの家にも寄り付かず、そのセリフを口にすることもなかった。 少年の手には笑ったかぼちゃのランプと、からっぽのかごがあるだけだ。 けれど少年はそのことを悲観するわけでもなく、これと言って積極的な行動に移そうともしなかった。 この日だけは夜でもにぎやかな公園のベンチに座り込んで、行きかう仮装姿の人々を楽しげに眺めている。 少年と同じ年恰好の子供が3人、彼の前を横切った。 一人でベンチに座っている少年に、その中の一人は足を止めて問う。 「どうしたの?お菓子もらえなかったの?」 けれど、問われた方の少年はにこりと笑っただけで、その質問には答えなかった。 「ねえ、大丈夫?」 もう一度問うが、やはり穏やかな微笑が返ってくるだけで、少年は答えない。 「ヒューイ、早く次の家にいこうぜ!」 「置いてくぞ!」 ヒューイと呼ばれた少年と一緒にいた少年たちが、焦れたように呼ぶ。 ヒューイはうんと返事を返し、未だ笑みを浮かべる少年の前を通り過ぎた。 ヒューイはその後、4つの家を訪問し、たくさんのお菓子をもらった。 クッキー、タルト、パイ、チョコレート、色とりどりのキャンディ。それらは手にした籠の中で山になっていて、数えることもできない。 帰り道、先ほど不思議な少年を見かけた公園を通り過ぎた。 視線をめぐらせて彼を探す。 (いた・・・・・・) 彼はまだ、同じベンチに座っていた。 ちょっと待ってて、と一緒にいる少年たちに言い残し、ヒューイは小走りで先ほどの少年に近づく。 「お菓子もらえた?」 ベンチの少年のかごはからっぽのままで、お菓子は一つも入っていなかった。 (もしかしたら、この子はしゃべれないのかもしれない・・・) ‘お菓子くれなきゃいたずらするぞ’ これを言わないと、お菓子はもらえない。 ならば、しゃべれないときはどうすればいいのだろう。 (だからお菓子を持っていなかったんだ) 「僕、たくさんもらったんだ。こんなに食べきれないから、半分こしない?」 ヒューイの提案に、少年は是とも否とも答えなかった。 きょとんと目を丸くして瞬きを繰り返し、柔らかく笑う。 「ねえ、来年は、一緒に回ろうよ。僕が君の分まで‘お菓子くれなきゃいたずらするぞ’って言ってあげる」 屈んで、少年の籠に自分のお菓子を半分入れながら、ヒューイは言った。 少年はやはり答えなかったけれど、笑みが深くなったように見えて、ヒューイもつられて笑い返した。 お菓子を半分に分けて、ヒューイは立ち上がった。 「きみ、この近くに住んでるの?」 けれどヒューイは、この少年を見たことがなかった。 まじまじと見ると、綺麗な顔をした少年だ。見かけたことがあれば記憶に残りそうなものなのだが、記憶のどこを探っても、彼の顔は出てこない。 少年はヒューイの質問に、笑ったまま上を指差した。 「・・・・・・空?飛行機で来たの?」 遠いところに住んでいて、親戚を尋ねてきたのだろうか。 だったら、見たことがないのも覚えていないのも当たり前だ。 ヒューイがそう結論付けたところで、少年は不意に立ち上がり、ヒューイの隣に並んだ。 少年の華奢な体躯から、ヒューイが自分より低いだろうと思っていた彼の身長は、以外にも5センチくらい高かった。 笑みを絶やさない表情のせいで気づかなかったけれど、歳も2つか3つ上なのかもしれない。 「もう帰るの?」 少年は笑んで、黒いローブのポケットから一つのお菓子を取り出し、ヒューイに渡した。 手のひらくらいの大きさの、ソウルケーキだった。 不思議に思って少年を見ると、彼の口元がわずかに動く。 『あ・げ・る』 「くれるの?」 少年はこくんとうなずいて、喧騒の公園をゆっくりと出て行った。 あとがき お久しぶりです。久々の小説は遅れまくりのハロウィンものです。そのうちサイトにも上げたいと思います。 ハロウィンには全然詳しくないので、インターネットで見ただけの知識しかありません。おかしなところがあっても、笑って流してください。 さて、タイトルにもなっている、最後に少年がヒューイにあげた「ソウルケーキ」、桜井の知識は 万聖節にキリスト教徒たちは村々を巡って「魂のケーキ(soulcakes パンの一種)」と引き換えに、亡くなった人たちへ祈りを捧げた。これが、お菓子のおねだりにつながっている。 という程度です。諸説あるようですが、これで行きたいと思います。 少年がソウルケーキをあげたのは、少年なりのお礼です。ソウルケーキは、死者への祈りと引き換えに差し出すもの。 ヒューイの好意が、少年にとっての祈りになったのでしょう。
「未練はないの?」
柔らかな長い巻き毛が、風に吹かれて揺れている。 問いかける彼女の声は優しくて、僕を責める気は少しも感じられない。 「そんなもの、とっくの昔に捨ててしまったよ」 僕はわざとそっけなくいった。 本当にそんなものはなかったし、こんな風に心配されるのも嫌だった。 「馬鹿ね、捨てられないから未練と言うのよ。あなたが昔捨てたものは、未練ではないわ」 優しい声に、少しの同情を滲ませていた。 哀れな子供を見るように、彼女は僕を見つめる。 「じゃあ、僕には最初から未練がなかったのかもしれないね」 彼女は長いまつげを伏せて、苦しげに「そうね」と言った。
「ああもう!こんなに遅くなる予定じゃなかったのに!あのおっさん最後の最後で面倒な仕事押し付けやがって!」
いくら嫌いな上司への悪態をついても、過ぎた時間は巻き戻せない。 月のない夜に灯すにはいささか頼りなげなランプが、跨る箒の先に引っ掛けられて揺れていた。 彼は一刻も早く自宅へたどり着こうと、箒の速度を上げる。もうすぐ夏だというのに、夜になるとぐっと冷え込んだ大気が頬を打った。 今日は朔月夜だから、どうしても早く帰りたかった。闇にまぎれて悪しきものたちが動き出すからだ。 イタズラをしたり、家畜を食らう程度なら可愛いもの。 彼らの中でも特に力のあるものは、人間を襲う。 それも、魔力を持った「魔法士」たちを。 ガサリ、と草むらが動いたような気がして、背中を嫌な汗が流れた。 無意識に箒の柄を握る手に力が入る。 地面の近くを飛んだ方がスピードを出しやすいのだが、仕方ない。高度を上げて、林立する木々のさらに上を飛ぶ。 スピードを落とすかわりに、気配を薄くする結界を張った。雑魚程度の「悪しきものたち」ならば気づかれまい。大物には・・・・・出会わないことを願う。
男が銀色に光る杖を一振りすると、見た事もないような美しい光が溢れた。
光は空中で固まって、一本の矢と成し、窓辺に黄色の薔薇が飾ってある屋敷へとまっすぐに飛んでいく。 それは屋敷を囲む赤茶色のレンガにぐさりと刺さり、次の瞬間には大きな爆発音と共に、屋敷もレンガも、黄色の薔薇も、炎に包まれていた。 ------町を焼き尽くすつもりか・・・・・・!?------ 止めるまもなく男はまた杖を軽く振って、新しい光の矢を作り出し、今度は多きな倉庫に火をつける。 炎の爆ぜる音、建物の崩れる音に紛れて、逃げ遅れた子供が遠くで泣く声が聞こえる。 杖を振るう男のすぐそばを、老人がよろよろと走っていく。 走るというよりは歩くと言った方が正しい早さだが、きっとそれが精一杯なのだろう。 俺が手を貸そうと駆け寄るよりも早く、老人は足元の瓦礫につまずいてよろけた。 男はそんな老人に一瞥を向け口元をゆがめて笑うと、また光の矢を作り出し始め、俺に背を向けて四方へと飛ばしていく。 「何をしているんだ・・・!あんたは!」 肩を掴んで振り返らせると、男は綺麗なアイスブルーの瞳をしていた。 20代前半から中盤の面立ちには、怒りの表情が浮かんでいる。 男は俺をギロリ睨み、邪魔をするな、と小さな声で言い放った。 「邪魔をするなだと!?俺の町を燃やしてるやつが何言ってやがる!」 「これは再生のための破壊だ」 憮然と言い放つ声は小さいのに、いたる所で起こる爆発音に、不思議とかき消される事がない。 「なん・・・・・・だって?」 「全てを壊す。そして今度こそ、美しい世界を作る。再生のための破壊だ。だから邪魔をするな」 男の言葉が理解できない。聞こえているのに、聞こえない。 「再生させるために、お前は今、壊しているのか」 男は冷たい色の瞳を眇めて笑う。 「先ほどからそう言っているだろう」 まるで物分りの悪い子供に言い聞かせるような口調だった。 「ふざけるな!この世にはなぁ!一度壊れたら直せないものがあるんだよ!」 それは歴史のある街かもしれない。 それは人の思い出かもしれない。 それは、人の命かもしれない。 「だから!なんでもかんでも壊せば良いってもんじゃないんだ!」 生まれてから20年、俺がずっと暮らしていた家が燃えていく。 父の顔も母の顔も、本物は見た事がない。幼い俺を抱えて笑う写真が一枚残っていたから、それを見て「知っている」だけだ。 それさえも今、炎の中にある・・・・・・。 思い出だって簡単に壊れてしまうんだ。人間は、忘れてしまうんだから。 「止めろ!止めてくれ!壊さないでくれ!」 町も人も、 二度と直せない。 ****** 今年の秋に始まるという噂の新ガンダム、「ガンダム00」が発表になりましたね。 キャッチコピー(?)が「再生のための破壊」と聞いたので、思いついた小話を書いてみました。 何はともあれ、ガンダム新作が楽しみです。 「この城よりも豪華な城はたくさんあるだろう。この城よりも大きなもの、堅牢なもの、有名なもの、例をあげたらきりがない。けれどね・・・・・・」 砂色の髪が、首を傾げる持ち主の動作にあわせて揺れる。白い頬と細い肩に、灰色の影が落ちた。 「この城が、僕は世界で一番いとおしい」 ***** 「どこへお出かけですか?」 麻で織られた白地のケープを頭からすっぽりとかぶり、見事な砂色の髪を隠した城主は、お忍びでどこかへ出かけるとしか思えない。 不審に思ってシャルが問いかければ、ふふふ、と人の悪い笑みではぐらかされた。 そのとき、二人が立っていた砂の城のエントランスに美しい朱色の円い文様が浮かび上がり、どこかから移転魔術の使い手がやってきたことを知らせた。 赤い文字が不規則に点滅し、感覚が少しずつ早くなる。 すぐに文様は鮮やかに光り、それが人の背丈ほどに膨れ、一拍の後に音もなく消えると、現れたのは一人の魔術師だった。 「お久しぶりです、ルー様。ご指名ありがとうございます」 魔術師は深い緑色のマントを右手でつまんで左足を半歩分下げ、頭を垂れた。 目上の者に対する正式な礼だ。 何ヶ月も前の話になるが、砂の城が人手不足で悩まされたとき、「求人広告」を貼る手伝いとして雇ったのが、この魔術師だった。 「ワーカー!よく来てくれたね」 名前を、ワーカー・エブリディ。 名前が素敵だから、という理由で決められた魔術師は確かに働き者だったが、いかんせん移転魔術は大雑把な位置移動しかできなかったはずだ。 初登場時、間違って執事アッサムの真上に落っこちてきた男である。 しかし今の彼といい、浮かび上がった美しい朱色の文様といい、「優秀」な雰囲気がする。 失礼だが、以前の彼には無かった物だ。 「ワーカー殿、なんだか雰囲気が変わられましたか?」 シャルの問いに、魔術師は人懐こい笑顔を向けた。この笑みが変わっていなくて、シャルは少しほっとする。 「最近術の調子が良いんです。そのせいじゃないかな。練習を怠らなかった成果がやっと現れ始めたみたいで・・・こんなこと言うと、半人前のくせにって、上司は怒るんですけど」 ***** ルーはやってきたワーカーを連れて、すぐにどこかへ移動して言った。もちろん移転魔術で。 何の打ち合わせもなしにすぐに出かけていったところを見ると、契約時に話はしてあるらしい。
WEB拍手のお礼を追加しました。
1~8パチパチまではキャラの匿名一言コメント、9パチパチ目に1~8のネタバレと、お礼小話がありますので、是非9回押してみてください。(笑) 1パチパチ目に「あの人」を起用するあたり、桜井は本当に駄目な大人が好きなようです。 でも正味な話、セリフだけで「誰なのか」分かってもらおうと思うと、あれぐらいアクの強い人じゃないと難しいんですよね・・・。 みなさんは、誰が誰だか分かりましたでしょうか。 お礼小話。 最近は現実ちょっとファンタジー風味のものばかり書いていたので、ファンタジー色の濃い作品は久しぶりです。 ドアノッカーが喋る設定なのは割とお気に入り。 ノッカーさんについてはほとんど描写はありませんが、大きくて立派なノッカーを想像してあげてくださいね。
時を刻む音がする。
枕元の時計は正確に、まるで贈ってくれた人物の性格を表すように、一分一秒の遅れも無い。 首だけを起こして、寝転んだまま窓の外をうかがうと、窓ガラス越しの真っ黒な闇に小さな銀色の光が一つ、輝いていた。 あれはきっと月だろう。星はここではあれほど強く光らないし、街灯もなかったはずだ。 心臓の鼓動にあわせて、頭がずきずきと脈打つように痛む。 同時にぼんやりとした不快感が体中をかけめぐり、指一本動かすことも億劫だ。 真夜中に目を覚ました原因はこの痛みだったのかと結論に達し、どうしたものかと思う。 そっと自分の額に手のひらを当てると、微かに熱い。 知らず小さなため息がもれる。 発熱による頭痛か、頭痛による発熱か、どちらにせよ、今夜は眠れそうに無い。 これでは流石に、明日の訓練にも支障が出るだろう。 せっかく得意なナイフ戦の訓練だからと、楽しみにしていたのに。 正確には、楽しみなのは訓練ではなく、優秀者に送られる商品だった。 学校とはいえ軍の一部であるから、優秀な者への支援は惜しみなく与えてくれる。 父や母の顔も知らず、ずっと一人で育てて来てくれた兄まで死んだ今となっては、そういう配慮がありがたかったし、事実意欲も駆り立てられた。 落胆が隠しきれなくて、先ほどよりも大きなため息が零れる。 「・・・・・・どうした?」 向かいのベッドの中から、いつでも不機嫌そうな声が問いかける。 もう4年も同室をしているのに、俺はたまに部屋を同じくする人物の存在を忘れてしまう。 別に気を使う間柄でもないし、向こうも俺が居ないかのように振舞うことが多々あるので、それでも良いかと思っている。 「いや、何でもない。悪いな、起こしたか?」 「起きてたんだ。・・・具合でも悪いのか」 声も見た目も、そして分かりにくいが性格も、決して悪くはない俺のルームメイトに難点があるとすれば、たぶん顔がデフォルトで不機嫌なことくらいだろう。 「ちょっと頭痛がな。最近はなかったから、油断してた。薬でも飲んで寝るよ」 俺がベッドから起き出そうとすると、待て、という短い静止の声がした。 「俺がやってやる。寝てろ」 珍しいこともあるものだ、と思ったが、彼が不機嫌な顔をしながら親切にしてくれることはよくあるのだと気づく。 基本的に、優しい男なのだ。・・・分かりにくいが。 タンスの上の汚れたレトロな救急箱から頭痛薬を一錠と、部屋の角に置かれた小型の冷蔵庫からミネラルウォーターを出し、俺のベッドのサイドテーブルに置く。 仰向けに寝たまま見上げる俺の額に、彼の冷たい手のひらが当てられた。 「熱もあるじゃないか。・・・風邪薬のほうがよかったか?」 ひんやりとした手のひらが気持ち良い。 手の冷たい人は心の温かい人だと言ったのは誰だったか。 「あ、兄ちゃんだ」 そうだ、今は亡き兄が、俺に教えてくれたんだ。 「おい、何言ってる。俺はお前の兄貴じゃない」 「なあ、知ってるか。手の冷たい人は心の温かい人なんだって」 「それがどうした」 「兄ちゃんの手は冷たかった」 「じゃあお前の兄貴は心の優しい人だったんだろうさ。・・・ほら、薬を飲め」 額にあった手が後頭部に回り込み、上半身を起こされる。 手渡された透明なグラスと、オレンジ色の錠剤を見つめて、思わず笑みがこぼれた。 「おい、本当に大丈夫か」 暗闇でにやにや笑う俺を見て、焦ったように肩をつかまれた。 「ちょっと思い出してたんだ。昔、兄ちゃんも俺が熱をだすとこうして薬を運んでくれた」 記憶の中の兄が「早く良くなれよ」と笑う顔は、目の前のぶっちょうずらとは似ても似つかない。 だが、手のひらの冷たさが、暗闇での相対が、似ているのだ。 そしてたぶん、俺を心配してくれる気持ちも。 「会いたいなぁ・・・兄ちゃんに」 何で俺を置いていったんだよ。 「行きたいなぁ・・・兄ちゃんのところに」 ぽろりと心の中身が零れ落ちたかのように、言葉が出た。 言った俺自身でも気づかなかった気持ちに、気づいてしまった。 俺は、兄と逝きたかったのか。 「・・・お前は今、生きているんだぞ」 悲しい目が、それ以上に怒りを含んだ声が、俺を貫く。 そんなことを言うな、と泣きそうな二対の瞳が言った。 「いずれ俺もお前も死ぬときがくる。軍に入り人を殺した瞬間から、俺はベッドの上で安穏と死ねるとは思っていないが、それでもまだ生きている。父が母が、仲間が、俺を生かしてくれたからだ。だからお前も、お前の兄貴がせっかく生かしてくれた命を、放り出すようなことは言うな」 早く良くなれよ、と笑う兄の顔が横切る。 そうだよな。 まだ死ねない。 俺を生かしてくれる人がそばにいる限り。 俺を殺す人が現れるまで。 「・・・・・・ごめん」 謝罪の言葉は、君と、兄に。 「お前の手も冷たかったよ」 ------知っているか、手の冷たい人は、心の温かい人なんだぞ----- 自分の手のひらを握りこむ。 熱を孕み熱いほどの体温が傲慢な自分に思えて、とてつもなく恥ずかしかった。 あとがき。 久しぶりに完結(しているように見える)作品が書けた気がします。 あとで加筆修正してサイトに載っけるかもしれません。 入りきらなかった設定としては、 ・二人とも軍立の学校の生徒。(軍人を育てる) ・エリート生は入寮でき、二人とも入寮している。 ・主人公(というか一人称の語り手)が使っている目覚ましは相方(登場人物の片方)が贈ったもの。 ・主人公は生まれてすぐ、両親と死別。その後、14歳で軍人だった兄(25歳)と死別。 ・兄の遺志を継ぐためアカデミーと呼ばれる軍学校へ入学、エリートだけが入れる寮に入る。(生活費が要らないため、必死になって勉強した) ・ルームメイトは貴族の御曹司。本当は軍に入らなくても良い身分のはずが、なぜか軍人を目指す謎な人。 ぐらいでしょうか。 意外と沢山ありました。追々書ければ良いと思います。
その谷の住人は、白い翼で大空を舞う。
-----西方巡礼記 第8章 翼を持つ者たちの谷----- 巡礼者だと名乗る男が「夕日谷」へやってきたのは、夏の終わりごろだった。 それでも、谷を被う草木は青々と茂っていたし、照りつける太陽も夏の香りが強い。 谷の住人たちは、やがて訪れるだろう哀愁を含む秋に思いを馳せるよりも、過ぎ行く夏の開放感を一時でも長く味わう方に忙しく、活気に満ちていた。 南北へ伸びる谷に、やはり南北へ伸びる市場は、谷の住人たちでごった返していた。 人々はみな、空の蒼と谷の緑をふんだんに散りばめた洋服を着て、笑いながら言葉を交わしあう。 ある日、昼食を求める人々の群れが落ち着きを見せ始めた一つの食堂に、風変わりな男が姿を表した。 黒いフードを目深にかぶり、肘まで被うケープと地面に届きそうなほど長いローブ姿が目に付く。 手には白木の杖をつき、ずりずりと引きずるように両足を動かして、緩慢な動作で角のテーブルについた。 男の肩が苦しげに上下しては、嫌な音の咳が零れ落ちる。 客たちは遠巻きに彼に注目し、そうはいかない女将が水を運びながら声をかけた。 「お客さん、具合でも悪いのかい?」 男は俯いたまま、東の方で少し、と答えた。 女将も、周りの客たちも、それだけで納得したようにうなずく。 この大陸の東にある王国の噂は、この谷にも届いている。 「お客さん、東からきたのかい。そりゃあ難儀だったねぇ。あっちは酷く荒れてるそうじゃないか。ま、零神(ぜろがみ)様を怒らせたんだ、しかたないとは思うがね」 夕日の谷からずっと東には、ギルクレントという王国がある。 王は公平で思慮深く、国を繁栄させることはなかったが、衰退させることもなかった。 もともと豊かな土壌に恵まれたギルクレントは、1年を通して何かしらの作物が育ち、日照りや洪水に悩まされることもめったにない。 貴族の中には嫌な連中もいるが、玉座を乗っ取ろうとする者はいなかったし、町民に多少偉そうな態度を取る程度で、可愛いものだとみんなが諦めていた。 春の日差しの中にいるような、まどろみを覚える国だった。 とろとろと、うつらうつらと、一日が過ぎていく。 刺激があるわけではない。けれど、平穏こそが幸福であると、国民は知っていた。 そんな中、一人の科学者の噂が、王の耳に届いた。 王城から少し離れた郊外に住むというその人物は、地べたを這う箱を作ったというのだ。 王は最初、馬車ではないのか、と思った。だが不思議なことに、その箱は動物に引っ張って貰わずとも動くらしい。 「その科学者と不思議な箱を、余の前へ連れてまいれ」 その科学者と不思議な箱が、王国のまどろみを切り裂き、春を夏へ、そして秋から冬へと変化させることを、王はまだ知らない。 王国の止まった時間が動き出すまで、あと14日。 続きます。
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